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池袋モンパルナス探訪記 松本竣介ゆかりの場所を訪ねて

かつて、ここはパリだった――。

2014年8月に発表された「全国人気の街ランキング(※)」で、関東地区の第1位に選ばれた池袋。でもその人気は、最近だけのことじゃないんです。

戦前この場所には、貧しくても希望に満ちた芸術家のタマゴが集まるアトリエ村がありました。通称「池袋モンパルナス」。ピカソやモディリアーニが暮らしたパリの街になぞらえて、詩人の小熊秀雄が名づけたのだそう。

あるとき、松本竣介や靉光など、好きな画家で「池袋モンパルナス」に住んでいた人が多いな……と気づいた私。何か特別な場所なのかも? と思い立ち、夏の終わりの休日、妹と2人で訪ねてみました。

良い年してなんで姉妹でつるんでるの? と言われそうですが、なにしろ同年代は仕事に家庭に忙しくなってくるアラサ―世代。休日につきあってくれる友人が少なくなるなか、姉妹で都内をブラブラ散歩するようになったのです。誘うのはたいてい、アート好きの私。妹はきれいなものが見られて、おいしいものが食べられたらそれでいいのだそう。

さて今日の目的は、松本竣介(1912-1948)ゆかりの場所めぐり。まずは池袋駅から有楽町線でひと駅の「要町」へ向かいます。

13歳の時に病気で耳が聴こえなくなり、画家を志した竣介。戦争中も東京や横浜の街をスケッチして歩き、36歳で亡くなるまでに、静謐な美しさに満ちた風景画をたくさん描きました。

東京生まれですが、2歳で岩手県に引っ越した竣介が上京したのは、17歳のとき。西池袋や長崎で暮らしながら、20歳のとき「すずめヶ丘」の一画に共同アトリエを借ります。その跡地が、現在の要町1丁目に残っているのです。竹藪がたくさんあり、いつも雀のさえずりが聞こえていたのでこの名がついたそう。
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細い道が続く住宅地。きれいに手入れされた庭木が多くて、緑に癒されます。

「この辺だけ流れる時間がゆっくりだね。住みやすそうな場所」(妹)

駅から歩くこと10分弱、着きました! アトリエ村に最初にできたといわれる「培風寮」です。
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「え? アパートじゃん」(妹)

そう「培風寮」は今も現役のアパートなんです。2011年に建て替えられた模様。うーん、萌える。リアルに住みたい! 

盛り上がる私をよそに、妹は「これだけかぁ」とパチクリ。すまない、妹よ。この辺りは空襲で焼けてしまったので、実はこれといった史跡は残っていないのです・・・
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とはいえ、どこかノスタルジー漂う路地裏は、散歩するにはもってこい。「へび道」と呼ばれる細い路地を、「えびす通り」商店街を目指して歩きます。
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この先に何が? とドキドキする小道。奥にはお社のある古い家と、学生寮風のアパートがありました。

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軒先で金魚を飼っているクリーニング屋さん。

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軒先でインコを飼っている表具屋さん。

「軒先にいろんな生き物がいるね。ひと昔前の日本みたい」(妹)

とにかく静かで、時が止まったような雰囲気。歩くほど心が落ち着いてくる、不思議な場所です。

そうこうするうちに、「腹減った」と騒ぎ出す妹。要町駅のほど近く、「家とごはん売ってます」という看板が気になる「なんてんカフェ」に入ってみました。
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古民家をリノベーションしてあって、2階は建築事務所とのこと。カウンターにはおそろいの紺のポロシャツを着た女性が2人、てきぱきと作業していて、美しい笑顔にほっこり。
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「おおー、一汁四菜! 具だくさん。近所にこういうカフェ欲しい」(妹)

ふわっと揚がったアジのあられ煮、冷やし茶碗蒸し、オクラとつるむらさきのジュレなど、どれも優しい味つけでおいしい!

のんびりしたいところですが、このあともうひとつ行きたい場所があるのであまり時間がありません。ところが奴は、
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「お姉ちゃん、あんみつ食べたい」(妹)

「ご注文を受けてから白玉をゆでるので、ちょっとお待ちいただきます」とお店の方。
「そこにシビレる、憧れるゥ~」などと言いながら、しれっとしている妹。
ちょっと焦りつつ、待つこと20分。
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結果は、大正解! ゆでたての白玉、シャキシャキした手作りのきなこアイス、ほろ苦い抹茶蜜が絶品でした。この妹、なぜか食べ物にだけは鼻が利くんです。
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あんみつの余韻にひたりつつ、幸せ気分で最終目的地へ。東京に出てきたばかりの松本俊介が、近くに住んでいたらしい「自由学園明日館(みょうにちかん)」に来ました。1921(大正10)年、巨匠フランク・ロイド・ライトの設計でできた建物は、重要文化財に指定されています。中では結婚式が行われていました。
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併設されたショップでは、自由学園の卒業生がデザインする玩具やテキスタイルを買うことができます。
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「なんてんカフェ」で使われていたカップを発見。フランク・ロイド・ライトがデザインし、ノリタケが復刻したもの。

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フォトスタンドも素敵。

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お店には機織り機が置かれていました。100人の来場者に少しずつ織ってもらう、というプロジェクト中とのこと。優しく指導してもらい、不器用ながら機織り体験。

気がつけば、もう夕暮れです。散歩のしめくくりは、東池袋にあるお気に入りの喫茶店「皇琲亭」で。
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名物のアレンジコーヒー、「アンブル・ドゥ・レーヌ」はおすすめです。

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松本俊介が「池袋モンパルナス」に住んでいたのは、17歳から24歳で結婚するまでの間。その頃に描かれた絵を、画集で眺めながらひと息つきました。

にぎやかな東池袋にいると、徒歩圏内の「池袋モンパルナス」周辺の静けさが嘘のようです。心がしんと落ち着く環境と、刺激に満ちた駅前の活気。そのギャップは、「今」の池袋の大きな魅力のような気がします。

これからも、ここから新しい才能がどんどん育っていきそうな街、池袋。まだ知らないアートスポットが、たくさんありそうです。

(※)不動産・住宅情報サイト「ホームズ」調べ
http://www.homes.co.jp/kurashito/life/ranking/ranking028/

店舗データ

■なんてんカフェ
http://nantencafe.com/
住所:東京都豊島区要町1-10-7
TEL:03(5986)1087
営業時間:11:30~22:00
(ラストオーダー 21:30)
休日:不定休有

■自由学園明日館
http://www.jiyu.jp/
住所:東京都豊島区西池袋2-31-3
TEL:03-3971-7535
見学時間:10:00~16:00(15:30までの入館)
※夜間・休日見学は時間が異なります。詳しくは電話にてお問い合わせください。
見学料:見学のみ400円/喫茶つき見学600円/外観のみ見学は無料

■皇琲亭
http://www.coffee-school.net/
住所:東京都豊島区東池袋1-7-2
TEL:03-3985-6395
営業時間:11:00~22:30
(ラストオーダー 22:00)
休日:年中無休

大原しまい 大原しまい
アート好きライターの姉が妹(http://yuberita.hatenablog.com/)を誘い、過去・現代問わず、池袋界隈のアートを訪ねてフラフラ歩く姉妹散歩。「池袋モンパルナス」の画家たちゆかりの地をベースに、近隣の美術館やアートイベント、途中で見つけた居心地のいいカフェなどを紹介していきます。