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池袋モンパルナス探訪記 乱歩の蔵は「頭脳の迷宮」だった 前編

乱歩邸の看板

「そのころ、東京中の町という町、家という家では、ふたり以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人『二十面相』のうわさをしていました」

こんな書き出しではじまる、江戸川乱歩の『怪人二十面相』。明智探偵と二十面相の奇想天外なバトルに、勇敢な探偵助手・小林少年の大活躍! 図書館でワクワクしながら『少年探偵団』シリーズを読んでいた、小学生のころを思い出します。

さて今回の散歩のお目当ては「旧江戸川乱歩邸」。「池袋。女子おひとり様、ご案内。」の庄司さんが「探偵バー」に潜入するとのウワサを聞き、「そういえば、池袋には乱歩がいた!」と連想した次第です。

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まずは駅前で、乱歩邸がある立教大学の場所をチェック。大学時代に何度か来たっけ……すでに記憶の彼方なので、私より道に強い妹が案内役に。前回と髪型が全然ちがいますが、同一人物です。

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東京芸術劇場前の彫刻にからむ。

徒歩7分ほどで、立教大学に到着。前回、奴の食欲のために遅れそうになった経験を生かして、真っ先に乱歩邸に行く予定でしたが……

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秋の立教大学のあまりの美しさに、思わず徘徊モードに。きっと見学者も多いのでしょう、怪しい人がいてもスルーしてくれる学生さんたち。

「赤煉瓦&ツタのオシャレビルヂングに囲まれて……大学生に紛れ込みたかったけど、ダメだった」(妹)

そうかな。手前の男子と、服装・性別ふくめてシンクロして見えるけど。

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それにしても、こんな場所でひと休みできるなんて羨ましすぎです。妹が「うぅーんモラトリアム!」などと失礼なことをつぶやいているのも、羨望のためでしょう。

つかの間の大学生気分を味わい、いざ乱歩邸へ。乱歩の邸宅と書庫として使われていた土蔵は、2002年に立教大学の所有になり、「立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター」として一部公開されています。

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目印のフクロウ親子。「うつし世は夢 よるの夢こそまこと」という、乱歩の座右の銘が刻まれています。

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おおっ、見えてきた! 石畳のアプローチを通って、母屋の玄関へ。洒落た玄関灯がモダンな雰囲気です。

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受付を兼ねた玄関には、ゆかりの品が展示されていました。本棚に並ぶ『少年探偵団』シリーズ。

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愛用の眼鏡やソフト帽、自筆の原稿、怪しく輝く黄金仮面もあります。

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ゆったりした庭から、乱歩が設計したという応接間を拝見。暖炉の上には、乱歩の肖像画がかかっています。ブルーベルベットのソファセットが気持ちよさそう! 落ち着いた調度品の数々に、主のセンスの良さがキラリ。

江戸川乱歩がこの家に引っ越してきたのは、昭和9年7月。41歳のときでした。1年ほど前に車町に移ったばかりでしたが、京浜国道と東海道鉄道の騒音にノイローゼ気味になり、あわてて転居したのだそう。立教大学や池袋第五小学校などの学び舎に囲まれ、夜の静けさはお墨付き。しかも車町の家よりも大きな土蔵がつき、庭も広いとあって「引き移った当座は随分と機嫌よくしていた」と、息子の平井隆太郎氏の著書『乱歩の軌跡』に書かれていました。

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庭に面したガラス張りの一室が、展示コーナーに。乱歩邸の見学では、内部に入れるのは玄関先だけ(応接室や蔵は外からのぞくスタイル)なのですが、展示品が充実しているのでじっくり見てしまいます。

「ポーズは小林少年を意識してみました」(妹)

さて、前編はこのあたりで。後編ではファン憧れのスポット、乱歩が「幻影城」と呼んだ土蔵に迫ります。

■旧江戸川乱歩邸(立教大学江戸川乱歩記念 大衆文化研究センター)
http://www.rikkyo.ac.jp/aboutus/profile/facilities/edogawaranpo/index.html
住所:東京都豊島区西池袋3-34-1
開室日:月・水・金曜(公開は水・金曜のみ)
時間:10:30~16:00
※公開日の見学は予約不要です

大原しまい

大原しまい
アート好きライターの姉が妹(http://yuberita.hatenablog.com/)を誘い、過去・現代問わず、池袋界隈のアートを訪ねてフラフラ歩く姉妹散歩。「池袋モンパルナス」の画家たちゆかりの地をベースに、近隣の美術館やアートイベント、途中で見つけた居心地のいいカフェなどを紹介していきます。


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