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WACCA × モーンガータ インタビュー
WACCA ART 関係者インタビュー
事業と表現が交差する場所
——WACCAで育まれた、企業とアートの協働のかたち
モーンガータは、化粧品の製造過程で廃棄される色材に着目し、それらを再利用した画材や表現素材の開発を行っている企業です。
ただし、モーンガータが生み出してきたのは、完成された「モノ」そのものではありません。
田中寿典氏、田中麻由里氏が繰り返し語ってきたのは、「体験価値を伴ったプロダクト」という考え方です。
モーンガータが提供しているのは、化粧品色材を添加し完成したプロダクトではなく、その一つ手前にある「色材(色の材料)」です。使い手がひと手間を加えることで、何にでも生まれ変わる可能性を持った存在として、様々な取り組みに色材を提供してきました。
今回は、モーンガータがWACCAという場でどのように表現活動と向き合い、企業としてどのような気づきを得てきたのかについて、田中寿典氏、田中麻由里氏の言葉をもとに振り返ります。

素材開発から始まった、表現との接点
モーンガータの活動は、化粧品業界における「廃棄される色材」の存在に目を向けたことから始まりました。
田中寿典氏は、素材としてはまだ十分に使えるにもかかわらず、役目を終えてしまう色材が多く存在する現実に、以前から疑問を感じていたといいます。
「素材としてはすごくきれいなのに、使われずに終わってしまう。そのこと自体に、ずっと引っかかりがありました」
そうした素材を、単なる再利用ではなく、「表現に使われる素材」として扱えないか。その問いが、画材や表現素材としての展開につながっていきました。
当初は、素材としての可能性をどのように伝えるかについて、試行錯誤の連続だったと田中氏は振り返ります。
結果として、モーンガータが重視したのは「完成品したプロダクトを渡すこと」ではなく、「使い手のひと手間が加わる余地を残すこと」でした。
そのひと手間を介することで、使い手それぞれの感性や思いが色材に重なり、結果として体験価値の異なるアウトプットが生まれていきます。
それには、製品として完成させること以上に、「なぜこの素材を使うのか」「どのような背景があるのか」を伝えることが重要だと考えるようになりました。

WACCAという場所との出会い

モーンガータがWACCAと関わるようになったきっかけは、展示やイベントを通じた協働でした。
WACCAは、美術館や専門ギャラリーのように「作品を見ること」を前提とした空間ではなく、日常的に人が行き交う商業施設です。
「WACCAは、立ち止まってじっくり見る人もいれば、何となく目に入る人もいる。その幅がすごく大きい場所だと思いました」
田中氏はそう振り返ります。
様々な人が行き交うからこそ、展示や体験の受け取り方も一様ではありません。
しかし、そのばらつきこそが、モーンガータの色材が本来持っている「使い手によって完成する」という思想と強く重なる可能性を感じていたといいます。
事業と表現のあいだで起きた変化
WACCAでの展示やイベントを重ねる中で、モーンガータは、自分たちの活動が「表現」として受け取られる場面に何度も立ち会いました。
これまで説明のために行っていた展示が、来場者から「作品」として受け取られたことが印象に残っているといいます。
「自分たちでは説明のためにやっていた展示が、『これは作品ですよね』と言われたことがありました」
多様な人たちと直接接した経験を通じ、モーンガータは、事業としてのアウトプットと表現としてのアウトプットを、必ずしも切り分ける必要はないのではないかと考えるようになりました。
そして、色材は、使い手の手間をかけてもらうことで完成し、同時に使い手に“成長させてもらう”存在でもある。その考え方が、より明確になっていきました。
田中麻由里氏も、企業活動の中にある実験的な取り組みが、WACCAという場ではそのまま提示できたことに意味を感じていたと話します。

WACCAとの協働で見えた、共に作る楽しみ

WACCAでの取り組みは、モーンガータにとって「協働」の考え方を見直す機会にもなりました。
展示やイベントの実施にあたっては、スケジュールや安全面、運営上の制約も多くありましたが、その都度、WACCAのスタッフが一緒に考え、調整を重ねてくれたといいます。
「提案したことに対して、まず『どうやったらできるか』を考えてくれたのが印象的でした」
企業と施設のどちらかが主導するのではなく、同じ目線で話し合える関係性があったからこそ、実験的な取り組みも実現できたと感じています。
この共に作るという感覚は、モーンガータにとって、今後ほかの場所で活動を行う際の一つの指針にもなっています。
対話と共感で見えてくるもの
モーンガータがWACCAでの経験を振り返る中で重視していたのが、「対話」と「共感」です。
様々な人が行き交うWACCAで出会った生活者の意見やリアクションは、試行錯誤の末に形づくられた現在のモーンガータの事業の在り方に、確かな影響を与えています。
「自分たちの中だけで完結していたら、見えなかった視点がたくさんありました」
事業として創業した自己内発性──なぜ自分たちがこれをやっているのか。
なぜ実の姉とともに創業したのか。
なぜ「色材」というレイヤーにアプローチする事業なのか。

そうした想いやストーリーを、広く伝え、共感を得ていくこと。
それによって、モノづくりをしているメーカーと生活者のあいだにあるコミュニケーションの不足を解消し、間に立つ存在としての役割を果たしていきたいと、田中氏は語ります。
これからWACCAで挑戦する人へ
最後に、田中氏は、これからWACCAで何かに挑戦しようとしている人たちに向けて、次のように語っています。
「完成した形を見せようとしすぎなくてもいいと思っています。途中の状態や、まだ整理しきれていない考えも含めて外に出してみることで、初めて見えてくる次のステップがあると思います」
モーンガータにとって、WACCAは、事業と表現、メーカーと生活者をつなぐための実験の場でした。
様々な企業や個人が関わり、枠組みを超えた共感と試行錯誤を重ねながら、共に育っていける空間が、WACCAにはあると強く語ってくださいました。
改めて、表現のかたちというのも一つではありません。新しいかたちを模索したい人、これまでとは違う文脈で自分たちの活動を提示してみたい人にとって、WACCAはその一歩を踏み出すための場になり得ることが示されたインタビューでした。

