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ー アート ー

池袋の中心で、古代を感じる

「こんな所に、本当に博物館があるんだろうか……?』

私がその時いたのは、池袋の中心・サンシャインシティの地下1階から3階に広がる専門店街アルパの中。若者や親子連れなど多くの人たちが行き交う、とても賑やかな空間でした。地図アプリが指し示す目的地はその先、東池袋駅方面へと進んだ場所なのですが、とても博物館があるとは思えません。

半信半疑の状態のままで進んでいくとビルが変わり、バスターミナルやサンシャイン劇場を有する、文化会館へとたどり着きます。アルパとは違った雰囲気にはなりましたが、ビルの1フロアに変わりはなく、博物館のイメージと程遠いことに変わりはありません。疑いが晴れないままエレベーターに乗り込み、案内の示す通り、7階のボタンを押します。

扉が開くと、つい数分前までのアルパの騒がしさが嘘のような静けさと、落ち着いた雰囲気が漂う空間が現れました。

1978年10月、サンシャインシティの開業半年後に設立され、41年経った老舗の博物館とは思えない清潔感のあるこの場所が、今回の目的地、古代オリエント博物館です。

オリエントとは、古代ローマから見た東方世界を指す言葉で、現在のイランやシリアを含む西アジアやエジプトを主に指します。

古代オリエント博物館は、今から約180万年前、人類がアフリカに誕生してから、イスラム教が起こる直前の紀元前650年頃までの、この地域のものを中心とした資料約5000点を収蔵すると同時に、研究施設としての機能も持っています。今回館内をご案内頂いた下釜和也さんも、必ず年に1度は現地調査に向かわれているとのことでした。

と、ここまでを読んで、どうにも難しそうだ、敷居が高そうだ、と思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください! そんな方々への心配りや仕掛けが、古代オリエント博物館の中には溢れています。

展示室入口に続く通路にはパネル等が設置されていてワクワク感を高めてくれますし、お子様にも楽しんでもらえるためのワークシートやクイズなども用意されています。大人気声優・関智一さんによる音声ガイドアプリや、東京オリンピックを見据えて多言語対応している映像コーナーもあります。

毎週土曜日には、研究員の方々が展示物の中から1つのテーマを選んで詳しく解説してくれる見どころトークの時間もあり、運が良ければ、実際に発掘されたものに触れられることもあるそう!

『みどころルーペ』という解説用の機械では、肉眼では中々確認ができない展示資料の細部や技工も確認することができます。

一部を除いて展示物の写真撮影がOKになっているのも嬉しい所で、SNSなどでシェアすることも可能です。

五感を使った様々な展示物の解説の工夫のおかげで、年齢や性別、また知識に関係なく、古代オリエントを楽しく学ぶことのできる工夫の数々からは、研究員・職員の方々の、『古代オリエントについて知ってほしい』という熱意すら感じます。

中でも特に面白かったのは、展示が始まる直前のスペースに置かれた、2台のタッチパネル式の大型ディスプレイでした。

『さわって学ぶ古代オリエント地図』では、地図上の地名をタッチすることで、文字で見ただけ、聞いただけでは分かりづらい、どこにどんな遺跡があるかを理解することができ、もう一方の、『さわって学ぶ古代オリエントの時代』では、年表をタッチすることで、簡単な歴史の解説や、館内にどのような展示物があるかも知ることが可能で、展示物を見る前の予習にピッタリの仕掛けです。

至れり尽くせりの様々なお助けアイテムの力を借りながら展示物を見ていくと、一見難しそうな展示物の数々の価値や尊さにも、きっと気づけるはずです。

展示されている紀元前2000年以上前の土器の数々は驚くほどに美しく、現代で作られたものと言ってもわからないほどで、土器や、土器の破片に描かれた謎の紋様と現代のデザイン感覚を比べてみても、大差はありません。

「遠い昔のものだから」「博物館にあるものだから」「難しそうだから』

そういった思い込みを捨て去って、展示物と向き合ってみましょう。

古代オリエントでは、パンや文字、契約書、法律など、現代に通じる文化の数々が生み出されました。

人口の増加や、考えや文化の違う異民族が増えたなどの理由でそれらが生み出されたことを考えると、現代と通じる部分、現代にも活かせる考え方があまりにも多いことに気づくはずです。

「古代を考えることで、現代についても考えてほしい」

案内をしてくださった下釜さんの言葉です。古代オリエントで起きた問題や生み出されたものを、私たちにもつながりのあるものなんだと考えた時、現代につながる意外なヒントを、発見することができるかもしれません。

一方で、案内をしていただく中で下釜さんが何度か仰った言葉が、「実は、わからないんです」でした。

土器に描かれた紋様の意味や、誇張された女性の像などなど、研究員の方々が何十年も掛けて、また、世界規模で見れば何百年という時間を費やしてもわからない謎が、ここには溢れています。

それらの謎に、どんなことを感じるか、自分なりの答えやロマンを夢見るかは、来場者次第です。

現代から遠く離れた古代オリエントを通して、現代について考えてみる。

そんな経験を、池袋の中心で、してみませんか?

より深く、どっぷりと古代オリエント世界に染まりたいという方は、毎月開催されていて、100名近くが参加されるナイト講座から参加されるのもオススメです!

古代オリエント博物館

HP:http://aom-tokyo.com/
住所 :〒170-8630 東京都豊島区東池袋3-1-4 サンシャインシティ文化会館7階
TEL:03-3989-3491
アクセス:
●電車でお越しのお客様
JR池袋駅 東口より 徒歩13分
東京メトロ有楽町線東池袋駅 6・7番出口より 徒歩6分
●車でお越しのお客様
サンシャインシティ地下駐車場(乗用車1,800台収容可能) 有料(30分300円)

開館時間
午前10:00 ~ 午後 5:00 (入館は午後 4:30まで)
夜間延長:「ナイト講座」のある日[2019年7月26日(金)、8月23日(金)、9月20日(金)]は開館時間を午後8時まで延長します(入館は午後7:30まで)。※後期は未定
コレクション展(常設展) 入館料
一般:600円 大学・高校生:500円 中・小学生:200円
※コレクション展の会期中の土曜日・日曜日は、小(保護者同伴)・中・高校生は無料です  (簡単なアンケート記入をお願いしています)


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