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池袋モンパルナス探訪記 マンガ家の聖地に行ってみた 後編

キアズマ珈琲

今回の散歩のテーマは、池袋周辺の「マンガ家の聖地」めぐり。妹はお休みで、姉のソロ散歩でお送りします。
マンガ家の聖地に行ってみた 前編からひきついだ後編です。

和やかなムードの「トキワ荘通りお休み処」。1926年築の米店を改装した内部は、ウッディで和やかな雰囲気です。木組みを露出した高い天井まで届く本棚に、トキワ荘のマンガ家たちの作品がずらりと並んでいます。

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藤子不二雄の『まんが道』をめくると、トキワ荘の初登場シーンが。

妙に落ち着くテーブルで、思わず読みふけってしまいました。妹が一緒だったら、あれもこれも! とテコでも動かなくなりそう。おそらくここだけで、今日の散歩は終了していたに違いありません。

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気を取り直して、2階の展示スペースへ。靴を脱いで階段を上がると、マンガ家のパネルが見えてきます。赤塚不二夫の美少年ぶりにびっくり。

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1956年に、トキワ荘の裏階段で撮影された写真。上段左から永田竹丸、寺田ヒロオ、森安なおや。中段が藤子・F・不二雄、下段左から藤子不二雄A、鈴木伸一。

展示室では、スタッフの男性が当時の様子を熱心に話してくれました。トキワ荘は、なぜか「建ったときからオンボロ」という不思議なアパートだったのだそう。手塚治虫が入居したときは新築だったのに、すでに壁と柱の間に隙間があって、隣の住人と目が合ったとか……。

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みんなのリーダー的存在だった、テラさんこと寺田ヒロオの部屋を再現したコーナー。面倒見が良く苦労性で、万一だれかがお金に困ったら渡せるように、きちんと用意しておくような人でした。

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部屋での酒盛りを再現したちゃぶ台には、テラさんが発明したチューダー(焼酎のサイダー割)もあります。とても臨場感があるのですが、男性いわく

「以前に水野英子先生がご覧になって、『こんなに散らかってなかったわよ』って言われちゃいました。もっときちんとした人よって」

とのこと。

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トキワ荘のエピソードは、テラさんなくしては語れません。すでに売れっ子だった手塚治虫は別格として、みんな駆け出しの貧乏青年ばかり。輝くような青春時代を過ごせたのは、きっとテラさんのような存在があったからでしょう。

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手塚治虫はトキワ荘の最初の住人ですが、実際に住んでいたのは1953年から1954年まででした。トキワ荘では「ジャングル大帝」の終盤や、『漫画少年』版の「火の鳥」を執筆。1954年には、関西長者番付の画家の部でトップになっています。なんでこんなアパートに? と、当時の記者は驚いていたそう。

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前編で食べてきたばかりのラーメン店「松葉」のどんぶり。ここでは立派な展示品です。

展示品を堪能して1階に降りると、事件が起きていました。トキワ荘のメンバーのひとりである、鈴木伸一先生がいらしていたのです。「ラーメン好きの小池さん」のモデルであり、杉並アニメーションミュージアムの館長でもある、あの鈴木先生です! この日、近くで講演会があって立ち寄られたご様子。思わぬラッキーに感謝しつつ、お休み処を後にしました。

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マイペースな妹なしの身軽散歩のはずが、ずいぶん長居してしまいました。てくてく歩いて次の目的地、雑司ヶ谷へと向かいます。まずは鬼子母神様に、姉妹の幸せを祈ってお参りを。

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冬枯れの参道を進むと、見えてきました……並木ハウス。1954年10月にトキワ荘を出た、手塚治虫の転居先です。ちなみにトキワ荘の敷金と仕事机は、入れ替わりで入居した藤子不二雄の2人にあげたのだそう。手塚先生、かっこいいです。

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実は並木ハウスは、今も現役のアパートなのです。こちらの建物は、正確にいうと並木ハウスの別館。素敵なカフェや「雑司ヶ谷案内処」が入っています。

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別館の脇の小道に入ると、並木ハウスがあります。手塚治虫は1957年に初台に引っ越すまで、2階の角部屋を使っていました。オーナーの意向で、当時の趣を残して改装してあるのだそう。住人がいるため中は見られませんが、感じの良いアパートです。

ブロック塀の上には、どーんと猫が。猫好きの妹がいたら突撃して、不審者ぶりを発揮していたことでしょう。

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庭木の白梅から、甘酸っぱい香りが漂っていました。

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トキワ荘からここまでけっこう歩いたし、ひと休みのコーヒーは格別のはず。別館にあった「キアズマ珈琲」にお邪魔します。

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外の光が柔らかく入ってくる、落ち着く店内です。もう夕方で、参道は人通りもまばらでしたが、次々にお客さんが来ていました。

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居心地のよいテーブル席。ほとんどのイスにブランケットが置いてあります。

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美しいブルーのカップに入ったコーヒー、本当においしかったです……! 濃厚なガトーショコラとの組み合わせも最高。常連らしいお客さんが多いのもうなずける、通いたくなるお店でした。

スターだった手塚治虫と、彼に憧れ、夢を追い続けたトキワ荘の青年たち。メンバーの多くは成功しましたが、なかには当時のマンガ界の風潮に賛同できずに筆をおいたテラさんのように、一線を離れた人もいます。前編で紹介したドキュメンタリー「わが青春のトキワ荘」の同窓会には、テラさんはついに姿を見せませんでした。

それでも、これほど素晴らしい青春を過ごせた人生に、憧れずにはいられません。多くの画家や作家、マンガ家を育んだ池袋の街。今この瞬間にも、若い才能が生まれつつあるのかも……。そんなことを思いながら楽しく歩いた、今回の散歩でした。

■トキワ荘通りお休み処
http://tokiwaso-street.jp/archives/1862
東京都豊島区南長崎2-3-2
営業時間:10:00~18:00(最終入館は17:30)
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は、火曜日が休みになります)
入館料:無料

■並木ハウス
東京都豊島区雑司が谷3-19

■キアズマ珈琲
https://www.facebook.com/kiazuma
東京都豊島区雑司が谷3-19-5
営業時間:10:30~19:00
TEL:03-3984-2045


カテゴリー:アート 


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