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ー 食 ー

出汁をとる愛情を届けたい、そこには美味しさ以上の“価値”が詰まっている

昆布の香り

daidokoro暮らし研究室】(ストーリーNo.003

「daidokoro暮らし研究室」は都会に暮らすあなたのために、過去の知恵を大切にしながら未来を考える“三方よし”の希望を叶える研究室です。 

作る人、料理する人、食べる人の三方それぞれの想いを抱きながら「縁側で語り合うように」温もりを感じる“ところ”(dokoro)でありたいと願っています。暮らしに欠かせない工夫や知恵、農や食についての想いをdaidokoroに関わる人々と一緒に考え、ひとりひとりの健康財産となるようお伝えしたいと考えています。コラムを通して、もうひとつのdaidokoroが食や暮らしにまつわるストーリーを丁寧にお伝えします。

出汁をとる愛情を届けたい、そこには美味しさ以上の“価値”が詰まっている

「もうひとつのdaidokoro」一日の始まりは“出汁をとる”ことからスタートします。
大きなお鍋にいっぱいの水を張り出汁を作り、味噌汁や茶碗蒸しに支度するのです。

静まる空間に血を巡らせる朝のひと仕事。
出汁をとりながら冷蔵庫を開けて献立を考え、今日出会えるお客さんの顔を思い浮かべながら手を動かしていきます。

家庭ではお湯を沸かして一日がスタートすることと似ているのかもしれません。と料理長はるさんは言います。

「手仕事は家族に想を馳せる時間。いつでも温かいお茶が飲めるようにという「おかあさんの愛情」を垣間見る瞬間ではないでしょうか。そしていつか両親と離れた時に感謝できるのも、その丁寧な手仕事の毎日が積み重なっているからこそ。ここでも温もりを感じる時間を過ごしていただきたいと思っています。」

出汁をとる時間に向き合い想うことは、一日の幸せと健康を願うひとときです。そこに集い食べてもらうことで感謝のバトンとして明日への健康財産になるのだと私たちは信じています。
そんな風に受け止めてくれる人のため、惜しみない愛情を注ぐことも新しい価値としてlここから社会へ届けたいと考えています。

最後まで使う“責任”が生む、食卓からつながる“美味しさ”へ

食材の個性を生かした工夫の一品に「昆布の佃煮」があります。素朴でありながら懐かしい味わいはご飯のお供に欠かせない定番の一品、なくてはならない存在です。
しかし、出汁をとった昆布と佃煮がつながっていることをご存知ない方が多いのも事実です。

食材を余すことなく使うこと、最後まで丁寧に使い切り“心”をかけることを大切に、誰もが美味しさや幸福感で満たされる。かつての当たり前の営みですが意外とつながっていないことを知らされハッとします。

出汁をとった昆布を再利用するつながる「美味しいかたち」を見てみましょう。

「昆布の佃煮」
〈材料〉
出汁をとった後の昆布…200g
A.しょうゆ…50ml、みりん…50ml、酒…50ml
B.てんさい糖…大さじ2、みりん…大さじ2
(お好みで)白(黒)ごま…大さじ2

昆布、不揃いな大きさも味わいに。
不揃いな大きさも味わいに

〈作り方〉

①昆布をお好みの大きさに刻み、鍋に入れる。(フードプロセッサーを使っても構いません)

昆布、青みが変化することも楽しみのひとつ。
昆布の青みが変化することも楽しみのひとつ

②  ①にAを入れて、火にかけ沸騰したら中火で煮詰める。

昆布、香りがさらに引き立つ。
昆布の香りがさらに引き立ちました

③煮詰まったらBを入れ、照りが出るまで煮詰める。
(酸味を付けたい場合は、お酢小さじ2を入れ一煮立ちさせて火を止める。)

昆布、お好みでごまを混ぜても香ばしく。
お好みでごまを混ぜても香ばしく

料理長はるさんに煮詰めている間の過ごし方について聞いてみました。
すると、それは「音」
料理とはかけ離れたような答えが返ってきました。

「美味しい一品を作るためには五感を研ぎ澄ませ、音や香りを常に意識しながら気を配り、他の調理も同時に進めています。」

保存が利くように照りをしっかりつける、ご飯味噌汁や他の献立とのバランスを考えて仕上げるようにしています。ごまや山椒の実を添えて変化を出すのも楽しみが膨らみますよ。」

出汁をとった昆布をまとめて冷凍保存すると一度にたくさんの佃煮が作ることができます。ご家庭では冷凍保存可能な作り置きにもおすすめです。ただし、解凍するときは必ず火入れして余分な水分を飛ばしてください。水っぽくならないようにこのひと手間が美味しさの秘訣になります。

煮汁が余った場合、煮物など他の料理の味付けにも使ってもうひと息吹。スタッフにはその精神が定着しているので決して捨てることはありません。たった少しの煮汁も他の一品に蘇らせることができる循環が楽しめるのです。

それは、
水を汚さないこと、そして海を汚さないこと。
海に囲まれた日本の“暮らしへの配慮”を日々の中で実践しているのです。

季節に合わせた味付けが体をいたわる“おもてなし”へ

夏が近づくこれからの季節はお酢で体をいたわってあげたいものです。
季節に合わせた味付けで心も体も健康でいること、梅雨を経て夏に向ける免疫力をつける準備をしたい時ではないでしょうか。
疲れにくく回復しやすい体づくり、おやつやおつまみにもなるおもてなしの一品「酢昆布」をご紹介します。

「酢昆布」
出汁をとった後の昆布…200g
米酢…150ml
水…150ml
てんさい糖…大さじ3塩…小さじ1弱

①昆布を好みのサイズに切り、鍋に入れる。
② ①に米酢を入れて2時間程度おく。
③ ②に水、てんさい糖、塩を入れ火にかけ沸騰したら中火で水分が無くなるまで煮詰める。
④水気が無くなったら、ザルなどにひろげて乾燥させる。
※オーブンを使う場合、余熱無し130℃で20分〜25分で乾燥させてください。

どこにもない形を継承すること、次世代への食のバトン

 “お腹を満たす”だけではないここだけの価値って何だろう。現代にできるdaidokoro空間の提案をひとつひとつ形にしたいと考えています。山里田畑、川や海が側にあり手の届くような土地に根ざした暮らしと食が当たり前にあった昔ながらのやり方に戻せないものかと願っています。それは日々ご提供する食事を介して物語っているのです。

五感を使って調理すること、食を通じて季節を感じること、エコな暮らしが当たり前にそこにあったことを実感いただけるひとつひとつが小さなヒントになると嬉しいです。

出汁にはじまる一日は、日本のそして和食の原点でもあります。
「もうひとつのdaidokoro」が未来へつながる場所として、知恵に溢れ、工夫を膨らませることで皆さんの生活になくてはならない“ひとつの価値”そして“もうひとつのdaidokoro”になれるよう願っています。

この場を通じて出会う皆さんに温かい暮らしとdaidokoroがありますように。

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手間ひまかけられた心づかいを味わってほしい。
その愛情こそが土のパワーだと私たちは考えています。
美味しく調理された一品も土の香りたっぷりの野菜そのものも全ては丁寧さが明日の命となる。daidokoroのお母さんの想いが一人でも多くの方に届くことを心から願っています。

もうひとつのdaidokoro http://daidokoro.wacca.tokyo

有機・無農薬野菜を中心にしたお惣菜ランチが魅力のレストラン。食と農を考えつなぐ「三方よし」を現代へ。かつての日本の当たり前を現代に伝える空間として、地域に解放された集いやすい温かな場所として存在し、WACCA池袋の中心的なコミュニティースペースとしても活用されている。地域・コミュニティづくり社会貢献活動の部門でグッドデザイン賞を受賞(2017年)。WACCA池袋はアートとカルチャーの発信融合の場として池袋の中心的な役割を担っている。

レシピ考案:石澤晴美
構成・文・写真:WACCA池袋「daidokoro暮らし研究室」


カテゴリー: daidokoro暮らし研究室 


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